KU-FELの詳細説明

KU-FEL では中赤外およびTHz領域のレーザを発生させ、様々なユーザー利用実験に用いられています。下図に施設の全体図を示します。

MIR-FEL には3つのユーザーステーション(US)があります。一つ目(US#1)では中赤外レーザの特性評価や単純な照射実験が行われています。二つ目(US#2)には極低温He冷却クライオスタット、ナノ秒Nd:YAGレーザ、ピコ秒Nd:YAGレーザ等が使用可能であり、MIR-FELと組み合わせたポンププローブ実験が行われています。三つ目(US#3)は多目的実験ステーションで、ユーザーが測定装置を持ちこんで実験を行う事が可能です。ただ、今はUS#3に同期励起型THzパラメトリック発振器が構築されており、利用不可となっています。

THz-CUR にはユーザーステーションがまだありません。ユーザー実験はTHz-CURの直ぐ近くに存在する光学台の上で行う必要があります。装置運転中には放射線が多量に発生するため、加速器室内には入れません。このため、サンプルの操作などをリモートで行う必要があります。

KU-FEL施設全体図

それぞれの光源性能を下のテーブルに示しました。

MIR-FELには二つの運転モード、即ち熱陰極モードと光陰極モードが有ります。

通常のユーザー利用実験は熱陰極モードで行われています。この運転モードでは約3GHzの繰り返しで約2μsの間、中赤外レーザがバースト的に供給されます。バースト全体での積分光エネルギーは高いですが、1ミクロパルス当たりの強度はそんなに高くない運転モードとなります。

光陰極モードは現在、開発中の運転モードです。この運転モードでは約30MHzの繰り返しで約2~4μsの間、中赤外レーザがバースト的に供給されます。1バーストに含まれるパルスの数が約1/100になっているため、バースト全体での積分光エネルギーは熱陰極モードと比べて低くなりますが、1ミクロパルス当たりの強度が高い運転モードとなります。この運転モードでは照射対象への熱的な影響が抑えられ、高いピーク強度のレーザ光を照射可能となるため、非線形現象の測定に向いた運転モードとなります。光陰極運転は特殊な運転調整を必要とするため、使用可能時期に制限があります。光陰極運転を利用した実験を行いたい方は装置管理者()までご連絡ください。

MIR-FELのUS#1にて測定した熱陰極モードでの1バースと当たりの積分光エネルギーの発振波長依存性を下に示します。最高積分光エネルギーは波長9μmで約40mJとなっています。光輸送路中での大気による減衰は輸送路中を窒素ガスで満たすことで低減可能です。窒素ガス置換は使用波長に応じて、施設側で対応します。

ユーザーステーション1での積分強度の波長依存性